マイ・アーキテクト

名古屋シネマテークに「マイ・アーキテクト、ルイスカーンを
探して」を観にいってきました。


休日のレイトショー、通常ならよほど話題になった映画とか
じゃなければ空いているのですが、結構入ってました。
何でかなと思って入場してる人を眺めてみると、どうも建築関係者、
建築を学んでいる学生さんなんかが多かったみたい。
通常のマニアックな映画を鑑賞する客層なんかとは雰囲気が
あきらかに違った感じでした。


内容は謎の死を遂げた現代建築の巨匠、ルイス・I・カーンの
息子が、その父の建築物、関係者をたどっていきながら真実の
父の姿をたどっていくといったドキュメンタリー。


正式な婚姻関係の妻以外に2人の愛人を持ち、採算性を無視した
仕事によって莫大な借金をかかえ、行き倒れに近い形で
ピッツバーグ駅の男子トイレで心臓発作で死んでしまった父を
2番目の愛人の息子、ナサニエルが足跡をたどりながら、
その真実の姿に近づいていく。


3つの家族を持ちながらも、それぞれをある意味ないがしろに
した父。建築家というよりも哲学者のような発言をする
謎の人物であった父。社会性が欠落し、経済合理性の観念など
まったくない事務所経営。そして表だって誰にも言わなかった
ユダヤ人としてのアイデンティ。


建築物を追いながら、関係する人々にインタビューしながら
多面的で奥深い建築家、芸術家であった父親の実像に
映画がすすむにつれ徐々に迫っていきます。
そして映画の最後、バングラディシュのカーン死後
9年を経て完成した国会議事堂をもって、その生涯の意味に
息子なりにたどりつき、それに決着をつけるかたちで
映画は終わります。


正直な話、私には映画の主題がよく理解できませんでした。
家族との葛藤を主題としているのか、父を理解しようと
してるその息子の話なのか、破天荒な天才の
有様をたどるのを目的としているのか。
個人的にはどれも掘り下げが十分でなく、見終わったあと、
あともうチョイ!みたいな印象が残りました。


映画の中で取り上げられた建物は、詳しい方、それを専門と
してる方にはそれだけでも観るに値するものでしょう。
素人の私でも、目を見張る建物少なくなかったです。
だからではないですが、もっと「建物に喋らせる」手法のが
よかったように思います。たまたま残ってたカーンの映像、
あまり意味の感じられないインタビューをつなぎ合わせるより
それのがよかった。


結局のところ結論は、芸術家はその残した作品が一番雄弁に
本人を語ってくれる。そんなようなことを思いながら、
映画館を後にした私なのでした。