深夜カフェのピエール

ishidatax2006-01-28

通常の入手方法では廃盤なんでしょうか、
レンタルショップでお払い箱になったものしか手に
入らなかったのです。「深夜カフェのピエール」。


内容はというと、夢をもってパリに上京した少年が
夢破れて男娼となっていく。そして娼婦との恋と
当然ながら悲劇で終わっていく話。


娼婦役のエマニエルベアールが前面に出ていますが、主人公はピエール
(マニュエルブラン)という田舎から上京してきた少年です。
田舎から俳優を目指して上京していきます。しかし思うようにいかず挫折。
生活のため、お金のため男娼に身を持ち崩していく。


年上の女性に面倒を見てもらったり、初老の同性愛者とのやりとり
などがありますが、とにかく暗い、暗い、ひたすら暗い話です。
画面も暗くひどく陰鬱。が、これが個人的にはある種心地いい。
そして暗い風景が主人公の心象風景と重なって、美しくも感じます。


終盤でピエールが娼婦と恋に落ちますが、当たり前のようにヒモがいて
そのヒモから精神的、肉体的制裁を受け夢破れていく。
その痛々しさも心に響きます。しかし一番心に響いたのは、そのヒモと
手下、少年、娼婦が車に同乗して歌を皆で歌うシーン。
なぜなら彼らは社会の底辺にうごめくことを宿命としてる。
人並みの恋をして、そこから這い上がること自体許されるはずもない。
皆が歌うことによって、そのことをヒモから教わるのです。
悲しいことですが・・・


この映画自体、発表当時いろいろな評価のされ方されたようです。
高評価、低評価、酷評、絶賛等々。
私自身はこのひどく孤独な登場人物、特に主人公の
たたずまいに魅せられました。
孤独と真正面から向かい合いながら表現していく。
なんとなく個人主義の王国フランスらしいと妙に感心しながら・・


孤独な個人主義で思い出したのが、昨年のパリの酷暑で沢山人が、
それも高齢者が死亡したといったニュースを聞いたときの
不思議な感動が頭をよぎりました。

酷暑で死んでしまう状況になっても殆どの人は誰も助けを求めない。
決然と一人で死んでいくことを選択する。
一人で死ぬことを恐れないこと、本当の個人主義ということは
そういうこなのでしょう。