奇術師

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)

クリストファープリーストの世界幻想文学大賞受賞作。
いままで奇術の世界はまったくの傍観者であったので、
奇術自体が売り買いの対象になったり、
マニア向けに専門書なんかも出ているなんてのは
この小説を読むまではまったく知らなかった。


2人の天才的奇術師(現代風に言うとマジシャンだが、
幻想文学にはそぐわない)の諍いと、それによる悲劇が主題。
小説の真ん中、少し後位までは、すごく読ませる。
ただ私としては中盤以降の疑似科学の解説にも似た進め方は、
少し興ざめしてしまった。ここの部分は解説を読むと史実から
もってきているらしいが、事実が虚構の力をむしろ弱くしている。
奇術師的な幻惑をできれば小説の最後まで継続してほしかったと思う。


中盤までの奇術師の手際にも似た記述(奇術)がとてもよい。
それだけにタネがわかってくると、
なあんだとなってくるのはしょうがないのでしょうか。