パンズ・ラビリンス

少し前映画館で観た予告編が気になっていた、
パンズ・ラビリンスを観に行ってきました。


スペイン内戦を生き延びようとする母娘。
その母親の再婚相手である大尉の残忍さに耐え切れない
娘(オフェリア)が、実は魔法の国のお姫様で、
それを証明するために3つの試練を牧神パンから
与えられる。そんなような話です。


登場する幻想の登場人物?パン、巨大な蛙、妖精、
どれもグロテクス。でも現実の世界の人間の残酷な
醜さと比べればさほど醜悪でもない。そのような描き方に
なってます。


後半、その極めつけの残忍さをもつオフェリアの父の
大尉が口をナイフで切られる場面があります。その切り
広がった口がまるで悪魔の口のよう。
頭に強く残るイメージでした。


個人的にファンタジーって、残酷で愛らしくって、
グロテスクで美しくないとダメなのです。
何かしら学ぶことがあるとか、成長するとか、
平和を願うとか、そういったメッセージが目についた
時点で幻想性は失われてしまう。
そういった意味ではよく出来たファンタジーだと思います。
大人の鑑賞に十分堪える。


例の魔法学校の生徒の映画、本がバカ当たりして以降、
ファンタジー映画が沢山制作されてます。でも私はまったく
興味なし。なぜなら私が知るファンタジーのもつ、
なんというか、心の内面の一番奥深い部分に、少しも
訴えかけ刺激するものがないのです。それがなければ
ファンタジーを観る(読む)意味はまるでない。


ファンタジーはもっとも純粋に文学的なもの。
ロジックでなく直接的に心、内面に訴えかける
剥きだしのもの。その点ではこの映画、
まず成功しているのではないでしょうか。


観終った後に残る切なさとやるせなさ。
女の子の愛らしさと恐怖と孤独。
それこそがファンタジーのもつ価値なのです。